教員と民間企業の10の違いと共通点~東証一部上場企業と教員現場双方で勤めた経験から~

東証一部上場企業で正社員(管理部門)、公立中学校で正規の教員として勤めた経験から、この2種の職場の実態とその違いを述べていきます。これから就職する人、転職を考えている人、そうでなくても興味があるたくさんの人に見ていただけたら幸いです。

違いその2 残業時間の実態

 労働環境でかなり重要な位置を占めることの1つに、残業時間の実態があるのではないでしょうか。

 

教員がどのくらいの時間勤務しているかご存知ですか?

 

最近はニュースなどで「教員の負担軽減」について議論されることも多くなってきて、少しずつ認知されてきているように感じますが、それでもまだまだ実態について理解されているとは言えないと思います。

 

どうしても、「公務員」というだけで「残業がない」「楽な仕事で定時あがりしている」と思われがちですが、実際にはかなりキツイです。

 

「残業がない」のではなく、「残業代がつかないから時間としてカウントされない」のです。

 

「残業代がつかない」=「残業がない」のではありません。

 

むしろ、残業代がつかないからこそズルズルいつまでも勤務していても上からも何も言われないふしもあります。

これが残業代がつく、としたら、管理職や教育委員会がもっと必死になって定時になったら教員を学校から追い出そうとするでしょう。

 

もっと言えば、給与は市や県から支払われるので、その財源は税金。予算も決められている。残業代は出したくても出せないのです。

 

教員の勤務時間の実態

もしすべての教員が正確に時間外勤務を申請して残業代がつくとしたら、

現在の教員の人件費は軽く1.5倍は必要になってしまうでしょう。

 

本来なら8時半~17時程度の勤務時間

(しかもその間に1時間程度休憩があるはず、実際は休憩などできないが)

のはずが、毎日21時、22時、、、時には日付が変わっても仕事を続けている先生もいます。

 

8時間程度の勤務時間のはずが、21時までいたとしたら4時間、0時までいたら7時間残業をしているわけです。

 

さらに教員には「部活動指導」があります。

 

最近やっと改善されてきましたが、まだまだ毎週土日のどちらも出勤していて、

丸1日休めるのは月に1度あるかないか、という先生もたくさんいます。

(逆に毎日定時でサーっといなくなり部活も拒否の先生もとても少ないですがいます)

 

少なく見積もって、土日3時間ずつ、平日平均3時間残業しているとすると、月に1日休めたとして月の残業時間は

3×29=87時間。

 

これは「過労死ライン」を余裕で超えています。

https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/h30_karoushi_zero.pdf

(厚生労働省 過労死等防止啓発パンフレット)

厚生労働省の発表によると、たとえばある人が過労死でよく言われる脳卒中の発症により死亡した場合、脳卒中発症前2~6ヶ月の間の月の平均残業時間が80時間を超えていると、過労死の可能性が高いということです。

 

多い人では、これをはるかに超えています。

私が教員として職場にいた頃の会話で、こんなものがありました。

 

管理職から全職員に向けて、残業時間の実態を把握するために専用のエクセルのシートに自分の勤務時間を入力するように言われた時のことです。

 

教員A

「はいはいっと、全部8:00~18:30(部活終了時刻)」←1ヶ月分をまとめて入力。

教員B

「絶対ウソですよね(笑)」

教員A

「だってほんとのこと書いたって呼び出されて『もっと早く帰れ』とか説教されて時間無駄にするだけだもん、帰ったって仕事終わらないんだから帰れるわけないのに。ただでさえ仕事する時間ないのにそんな説教で時間とられてる場合じゃないんだよ、仕事減らせるわけじゃないんだから」

教員B

「ですよね・・」

 

そしてほとんどの教員が認められている範囲までしか時間外労働を申告しない。

事実を申告したところで改善されるわけがないと思っているから。

 

ちなみにこれだけでも失っている昼休憩1時間+時間外労働1時間半で2時間半。

×20日すると50時間の時間外労働をしています。

朝も朝練がある部活動がほとんどなので、始業より1時間は早く出勤しています。

それも追加すると+20時間。

さらに土日3時間計6時間部活動をしたとすると、6×4週間で+24時間。

50+20+24=94時間・・・

部活動を持っているだけで94時間の時間外勤務・・・。

(当然残業代は出ません。あ、「部活動手当」という申し訳程度の手当ては出ます)

 

部活を持っていると、部活動指導+教科指導だけで94時間の時間外勤務が最低ラインなのです。

(冬は最終下校時刻がもっと早くなるので20時間程度は減りますが)

もちろん教員は部活動だけもっているのではありません。

 

  • 教科指導
  • 担任としてクラスを持っていればその指導
  • 分掌として委員会を持っていればその指導
  • 教員どうしの会議

これらの仕事もあり、上記の時間外勤務にはこれらの準備をする時間は当然含まれていません。(授業の間に空き時間がある日があってもとても終わる量ではありません)

 

これらをこなすとなると、過労死ラインの80時間はむしろ少なく感じてしまいます。

 

早く帰れる先生は家でやってるんですよね‥。

 

民間企業にいた頃

民間企業にいた頃は、残業はありましたがしっかり15分刻みで残業代をもらうことができていました。

 

私は管理部門だったので、繁忙期以外はだいたい定時あがり~1時間程度の残業。

繁忙期は日付をこえて終電がなくなることもありましたが、遅くまで残業するのはだいたい半月くらいで終電がなくなるまで遅いのは多くて2、3日程度。

 

もちろん電車がなくなるとタクシー代も出ていました。

残業代はだいたい時給にすると2千円前後だったと思います。2千円弱かな?

 

繁忙期以外は、

「残業少なかったからお給料少ないな~もっと残業したい」

とまで思ったものです。

 

教員になってからは考えられないことです・・・。

 

「お金払うから早く帰りたい」

とまで言っている先生を何人か見てきました(笑)

残業代も出ないのに(TOT)

 

勤めていた会社はホワイト企業だったので、比べると差が激しすぎて別世界の住人のようですね(^^;ブラック企業であればいい勝負できるところもあると思います。

 

今後はラクになるのか・・

厚生労働省は企業に向けて時間外労働の規制を設けました。

大企業は今年の4月から施行、中小企業は来年の4月から施行されるようです。

 

ただしこれは民間企業へ向けた規制です。

 

公務員である教員はどうなるのか?

 

労働基準法自体が改正されたようですね。

こちらのサイトでわかりやすく解説されています。

 

これで今後は少しでも負担が減るといいですね。

ただし、いたずらに「早く帰れ」と言ったところで無意味であることは、

この記事を読んだ皆さまなら理解してくれることと思います。

 

自分の担当している部活や委員会の活動中に、生徒の元を離れて自分の仕事をしていると、トラブルが起きた時に対応できない、指導が行き届かず達成感がいまいちになるなど、様々な弊害がでてしまうため、なかなかそうもできないのです。

 

近年は教員の人材不足が叫ばれていますが、こんなにキツくて残業代も出ないことが徐々にバレはじめたからですかね・・

 

これからの方々のためにも、労働環境の改善を切に願っております。